こんにちは、ギェギョポンです。
12月中旬に活動するふたご座流星群は「三大流星群」のひとつで、毎年外れなしにたくさんの流星を見ることができます。
星がよく見える場所に行けばたくさんの流星を見ることができますし、都会の明るい空でも結構な数の流星を見ることができるかもしれません。
この記事では、ふたご座流星群の2023年の状況や、流星についての情報をまとめました。
流星を見たい方や流星のことを知りたい方に、この記事が参考になればと思います。
本文
今年のふたご座流星群の状況を手っ取り早く知りたい方は、「まとめ」をお読みください。
「ふたご座流星群とは」以降で、「まとめ」の内容を少し詳しく説明しています。
流星についてさらに知りたい方は「流星とは」以降も読み進めてみてください。
まとめ
2023年のふたご座流星群は、極大の時刻が日本で見やすい時刻に大変近いことと、月明かりの影響がないことから、大変よい条件で見ることができます。
2023年のふたご座流星群を見るなら、12月13日の夜から16日の朝までの3晩のいずれか(もちろん3晩全部でも)に見るのがよいでしょう。3晩の中でも、14日の夜中過ぎ(から15日の夜明け前にかけて)に最も多くの流星が見えると予想されています。空が暗い、星のよく見える場所でしたら、いちばん多いときには、1時間あたり70個程度の流星が見えるかもしれません。
いずれの晩も、21時頃から流星の数が増え、真夜中を過ぎた頃に流星の数が最も多くなると思われます。
空のどこを見るかを気にする必要はありません。流星はいろいろな方向に現れます。
流星群を見るのに向いている場所は、空が暗く(普段から星がたくさん見え)、空を広く見渡せる場所です。大きな町からはなるべく離れるのがよいでしょう。
ふたご座流星群とは
ふたご座流星群は毎年12月中旬に活動する流星群です。たくさんの流星を見ることができる流星群3つをまとめて「三大流星群」と呼びますが、ふたご座流星群はその1つです。三大流星群の残り2つは、1月のしぶんぎ座流星群と、8月のペルセウス座流星群です。
ふたご座流星群は、毎年安定して多くの流星が現れます1し、それほど遅くない時間帯に見られるということもあって、比較的見やすい流星群です。
ただ、とても寒い時期に活動するのが、少し大変なところかもしれません。
今年のふたご座流星群
2023年のふたご座流星群の極大2は、12月15日4時頃3と予想されています。日本でふたご座流星群が見やすくなるのが2時頃ですので、今年は極大の時刻が見やすい時刻にたいへん近く、よい条件です。
しかも、2023年は12月13日が新月です。ふたご座流星群の極大の時期は新月の日にとても近いため、月の影響はまったく気にする必要がありません。
極大の時刻がよく、月の影響がないため、2023年は、ふたご座流星群を絶好の条件で観察できます。
最も多くの流星が見えるのは、12月14日から15日にかけての夜だと考えられます。
その前後、13日の夜や15日の夜にも、14日の夜ほどではありませんが、多くの流星を見ることができるでしょう。
(これは年にはよりませんが)ふたご座流星群の流星は、空が暗くなった頃には現れ始め、21時頃からだんだん数が増え、真夜中を過ぎた頃に最も多くなる傾向があります。できれば真夜中すぎに観察をすると多くの流星を見られそうですが、無理をせずもっと早い時間帯に観察をするのもよいでしょう。
空の暗い場所でしたら、一番多く流星が見えるときには、1時間あたり70個程度の流星が見えるかもしれないと予想されています。
流星が見える方向
流星は空のいろいろな方向に現れます。「ふたご座流星群」という名前ですが、ふたご座の方向だけに流星が現れるわけではありません。
流星群の流星の現れ方には特徴があります。
「放射点」と呼ばれる夜空の一点を中心に、外に向かって放射状に現れることです。放射点がふたご座の近くにあることから、「『ふたご座』流星群」と呼ばれています。
放射点近くに現れる流星は、こちらに向かって移動しているため、経路が短くゆっくり動いて見えます。放射点からある程度離れた方向に現れる流星は、流星の移動を横から見ているため、経路が長く速く動いて見えます。
夜空に流星を見つけたときに、その流星がふたご座流星群の放射点から外に向かって移動していれば、ふたご座流星群の流星である可能性がとても高いと考えられます4。逆に、そうでない方向に移動する流星は、ふたご座流星群の活動時期であっても、ふたご座流星群の流星ではありません5。
流星の観察方法
流星をたくさん見るには、なるべく空が暗い(普段から星がたくさん見える)場所で見ましょう。空が明るいと、暗い流星が空の明るさに紛れてしまって見えなくなり、見える流星の数が少なくなります。
では、どこが「空が暗い」場所かということですが、大ざっぱに言うと、大きな町から離れればそれだけ空が暗くなります。大きな町には人工の光がたくさんあるため、その光が空を照らして、空が明るくなってしまうのです。
近場で観察する場合でも、近くに明かりがなるべく少ない場所を探すとよいでしょう。
空が広く見渡せることも重要です。流星は空のいろいろなところに現れますので、空が広く見えていれば、そこに流星が現れる確率も上がります。
流星を観察するのに特別な道具は必要ありません。肉眼で観察しましょう。
双眼鏡や望遠鏡を使うと、見える範囲がとても狭くなってしまい、どこに現れるかわからない流星を捉えるのには不利になります。
目が暗さに慣れるまでには時間がかかります。暗い場所に行ってから15分くらいは目を慣らすとよいでしょう。その間、スマートフォンの画面など、明るいものは見ないようにしましょう。
立ったままずっと空を眺めているのはとても疲れます。
レジャーシートなどを用意して寝転がって空を眺めると、楽に観察ができます。(そのまま寝てしまわないよう、昼間寝ておくなどして頑張りましょう。)
屋外でじっとしているため、とても強い寒さを感じるでしょう。やり過ぎと思うくらい防寒をするとよいかもしれません。懐炉を使ったり、寝袋に入ったりするのもよいでしょう。
無理はしないでください。
また、夜間に大声を出したり、入ってはいけないところに入ったりするとトラブルの元になりますので、ルールやマナーを守って行動しましょう。暗い中で行動することになりますので、事故などにも注意しましょう。
流星とは
ここから、少し詳しいお話をします。
流星は、宇宙を飛んでいる砂粒のような塵が、地球の大気に高速で飛び込んで光る現象です。
一般的には、流星群の流星は、彗星から飛び出した塵粒が元になっています。しかし、ふたご座流星群は例外で、塵粒を出した天体は彗星ではなく、「ファエトン (3200 Phaethon)」という小惑星だと考えられています。(元になる天体を「母天体」と言います。)母天体から飛び出した塵粒は母天体の軌道全体に広がっていて、そこを毎年地球が通るときに、塵粒が地球の大気に飛び込んできます6。
そのため、毎年同じ時期に同じ流星群の流星が現れるのです。
どの塵粒も同じ方向からやってくるため、見ている人からは、ある点から放射状に流星が現れるように見えます。流星が放射状に現れる中心の点を「放射点」と呼びます。放射点は概念上の(頭の中で考えた)ものですので、夜空に目を凝らしてもそこには何も見えません。
たまたま放射点に流星が現れると、光が現れて移動しないで消えていくように見えます。このような流星を「静止流星(停止流星)」といいます。静止流星は、まっすぐ自分に向かってくる流星です。
見える流星の数
見える流星の数には、流星群自体の活動の活発さに加えて、観察する場所での放射点の高度、空の明るさが関係します。
流星群自体の活動
彗星の軌道に広がった塵粒には、密度の濃い(密集した)部分と薄い(まばらな)部分があります。密度の濃い部分に地球が飛び込んでいけば、多くの塵粒が大気に飛び込んできますので、たくさんの流星が現れることになります。
大気に飛び込む塵粒が増え、現れる流星の数が多くなることを、「流星群の活動が活発になる」と表現します。
大ざっぱに言うと、塵粒は彗星の軌道を筒状に包んでいて、中心に向かって塵粒が濃くなっています。そのため、地球が塵粒の群れの中心に近づいていくときには流星群の活動は活発になっていき、最も濃い部分で極大となり、極大を過ぎると塵粒は徐々にまばらになっていって流星群の活動は落ち着いていきます。
放射点の高度
流星群の活動の活発さが同じでしたら、放射点の高度が高くなるほど、現れる流星の数は多くなります。
ふたご座流星群の流星が、21時頃から数が増えていき、真夜中過ぎに最も多くなる傾向があるのも、放射点の高度が真夜中過ぎに最も高くなるためです。
放射点の高度が上がると流星の数が増える理由の1つは、同じ数の塵粒が飛び込んでくる範囲の違いによるものです。
同じ数の塵粒が、真上からやってきた場合と、斜めからやってきた場合を比べてみましょう。塵粒が斜めにやってくると、同じ数の塵粒が、より大きな面積に広げられることになります。そのため、見える流星の数は少なくなります7。
放射点が地平線の下にあるときには流星は現れません8。
空の明るさ
たくさんの星が見える空(暗い空)ほど、流星もたくさん見えます。反対に、星が少ししか見えない空(明るい空)では、暗い流星が見えなくなる分、見える流星の数は少なくなります。
場所などによる空の明るさの違い以外に、月も空の明るさに影響します。
月がとても細いときにはあまり影響がありませんが、月は太くなるほど明るくなります。満月の頃には最も明るくなり、満月に照らされた空は、かなり明るい流星でないと見えないような明るい空となります。
ふたご座流星群の場合、1等級暗い星まで見える空で観察すると、見える流星の数は2倍半以上になります9。
ふたご座流星群の母天体(2023年12月11日追記)
流星群の母天体のほとんどは彗星です。彗星は、氷と石(塵粒)が混ざった、よく「汚れた雪だるま」と呼ばれる天体です。彗星が太陽に近づくと、氷が昇華してガスになり、それとともに塵粒が放出されます。その塵粒が地球の大気に飛び込んで流星となります。一方、小惑星は石や鉄でできていて、塵粒を放出しません。
ふたご座流星群の母天体はファエトン(Phaethon、「フェートン」とも呼ばれる)だと考えられています。ファエトンは1983年に小惑星として発見されました。
ファエトンの軌道がふたご座流星群の塵粒の軌道と一致することから、ふたご座流星群の母天体はファエトンではないかと推測されました。小惑星であるフェアトンは塵粒を放出していませんでしたので、おそらく過去には彗星として塵粒を放出していたものが、氷の枯渇などなんらかの理由で現在は放出が止まってしまったのではないか、と考えられました。
2009年になると、NASAの太陽観測機「STEREO」が、ファエトンが近日点(軌道上で太陽にいちばん近くなるところ)付近で、短い尾を引いているのを観測しました。2012年、2016年にもファエトンの尾が観測されたことから、ファエトンは、活動度は低いものの、今でも彗星としての活動をしていると考えられるようになりました。
ところが、2018年にNASAの太陽観測機「Parker Solar Probe」の観測から、ファエトンが放出できる物質の量が、ふたご座流星群の元になるには少なすぎるということが指摘されました。さらに2022年には、太陽観測機「SOHO」の観測などから、ファエトンの尾が塵粒ではなくナトリウムのガスでできていることがわかりました。
それでは、果たしてふたご座流星群の元となる塵粒はどのようにして供給されているのでしょう。その謎を解くため、JAXAは探査機DESTINY+の打ち上げを計画しています。DESTINY+探査機は打ち上げから2年ほどかけてファエトンから約500kmまで接近する予定です。すれ違いざまの短い時間に、ファエトンの表面の撮影と周辺の塵粒の分析をおこないます。
2024年度に打ち上げ予定だったDESTINY+ですが、ロケットの開発が遅れているため、打ち上げ時期が2025年度に延期されました。
関連情報
参考
- 国立天文台:ふたご座流星群が極大(2023年12月)
- IMO (International Meteor Organization):2023 流星カレンダー(英語)(光度比を参照)
- 国立天文台・朝日新聞社:すばる望遠鏡ライブカメラ
- 内山茂男さん:流星眼視観測の集計計算方法(放射点の高度による流星数の違いを参照)
- 国立天文台:こよみの計算(各地の月の出時刻や日の出時刻を調べることができます)
- JAXA:
- NASA:小惑星の彗星状の尾が塵粒ではないことを太陽観測機が解明(英語)
- 埼玉新聞:探査機デスティニー打ち上げ延期
その他
変更履歴
- (2023年12月11日)「ふたご座流星群の母天体」と関連するリンクを追加しました。
脚注
- ペルセウス座流星群も安定しています。しぶんぎ座流星群は年によって当たり外れがあります。
- 流星群の活動がいちばん活発になることや、その時刻のことをいいます。
- ふたご座流星群は、毎年、太陽黄経262.2度の頃に通常の極大となります。「太陽黄経」というのは、名前は「太陽…」ですが、太陽の周りを回る地球の位置を示していると考えるとよいでしょう。太陽を中心に、春分点という特定の場所から、地球が公転によってどれだけ移動したかを角度で示したものです。
- たまたまふたご座流星群でない流星が同じような方向に移動する可能性もありますので、100%確実な見分け方ではありません。
確実に見分けるためには、流星を2地点以上から観測して、三角測量の原理で流星の3次元的な経路と速さを割り出します。さらにそれを宇宙空間に延長し、元の塵粒が母天体と同じ軌道を持っていれば、その流星群の流星であると判断できます。 - 特定の流星群のものでない流星を「散在流星」と言います。
- ですから、地球と軌道が交わっている天体だけが、流星群の母天体になることができます。
- 放射点の高度をθ度とすると、放射点が天頂(頭の真上)にあるときと比べて、同じ数の塵粒が飛び込む面積は(1/sin θ)倍に広がります。
これは、例えば放射点の高度が30度であれば、同じ数の塵粒が飛び込む大気の面積が2倍に広がるため、流星の数は半分になる、ということです。(図2の右は放射点高度を30度として描いています。) - 放射点が地平線よりわずか下、という場合には、数はとても少ないのですが流星が現れることがあります。
- 「1等級暗い星まで見える空では何倍の流星が見えるか」を数値で表したものを「光度比」といいます。例えば、光度比が2の流星群を観測し、(いちばん暗い星が)3等星まで見える空で10個の流星が見えたとします。すると、もしも4等星まで見える空で観測した場合には、10×2=20個の流星が見えると予想されます。6等星まで見える空では10×2×2×2=80個です。
ふたご座流星群の光度比は2.6です。