こんにちは、ギェギョポンです。
皆さんは、未来や過去のある日の月齢(月の満ち欠けの目安)を知りたいと思ったことはありませんか? 現代はインターネットが発達していて、ウェブ上のサービスを使えば正確な月齢を知るのは簡単です。でも、おおよそでもいいから、頭の中だけで月齢を計算できたら便利だ(しかもカッコイイ)と思いませんか?
この記事では、特定の日のおおよその月齢を暗算で計算する方法を紹介しています。
本文
月齢とは
月齢というのは、直前の新月を0として、そこから何日経ったかを示す数字です。
月齢と月の満ち欠けの関係
月は、月齢0の新月からだんだんに太くなっていって、月齢2前後で三日月に、月齢7前後で上弦(半月)になり、さらに太くなって月齢15前後で満月となります。そこからは今度はだんだんと細くなっていき、月齢22前後で下弦(半月)になり、月齢30くらいで再び新月になります1。新月から次の新月までは、平均して29.5日(約30日)かかります。

このように、月齢がわかると、そのときの月の満ち欠けの状況がわかります。
月齢についている小数
月齢には小数点以下の数字がついています。この小数点以下の数字はどういう意味なのでしょう。
まず、新聞などに載っている「月齢」は、その日の正午における月齢(「正午月齢」と呼びます)です。
また、実は「新月」というのは、天文学的には、太陽と月が同じ方向になった「瞬間」2を言います。
新月から正午までに時間が経過すると、その分 月齢が進み、小数点以下の数字がつくことになります。
具体例で考えてみましょう。
例えば、ある日の9時36分が新月(の瞬間)だったとします。この場合、9時36分の月齢は0.0です。
次に、この日の正午(12時00分)の月齢を考えてみましょう。9時36分から正午になるまでには、2時間24分が経過しています。2時間24分は、日に換算すると0.1日に当たります3ので、この日の正午の月齢は、この2時間24分の間に0.0から0.1だけ進んで、0.1となります。
なぜ月齢を暗算で計算したいか
星を見る人にとって、月の満ち欠けはとても重要です。星を見る計画を立てるとき、満月に近い日は星がよく見えない4ため、そのような日は避けて、新月に近い日を選ぶでしょう5。
例えば、翌年のペルセウス座流星群が見頃になる頃6の月の満ち欠けは、どうすれば知ることができるでしょう。スマートフォンやパソコンが手許にあれば、国立天文台サイトの「こよみの計算」ページなどにアクセスして月齢を調べれば、月の満ち欠けの状況を知ることが簡単にできます。
でも、それを頭の中だけで計算できたら便利だ(しかもカッコイイ7)と思いませんか?
月齢の簡易計算
ここでは、日本天文学会8の雑誌「天文月報」に掲載されていた記事を参考に、月齢を簡易的に計算する方法を紹介します。
計算式
Y年M月D日の月齢を計算する計算式は次のとおりです。
(Y-YB) × 11 | + | f(M) | + | D |
年の計算 | 月の計算 | 日の計算 |
(YB:基準年、f(M):月から決まる数)
ひとつ(1項)ずつ見ていきましょう。
年の計算
Yから過去直近の基準年を引き、11を掛けます。
基準年は以下の年です。
1759年 | 1778年 | 1797年 | 1816年 | 1835年 |
1854年 | 1873年 | 1892年 | 1911年 | 1930年9 |
1949年 | 1968年 | 1987年 | 2006年 | 2025年 |
2044年 | 2063年 | 2082年 | 2101年 | 2120年 |
2139年 | 2158年 | 2177年 |
(この表を眺めていると気づくかもしれませんが、年の間隔がちょうど19年ずつになっています。月の満ち欠けの状況は、19年経つと、19年前とほぼ同じ状況に戻るということです。)
実は、2025年は月齢の計算がとてもやりやすい年です。というのも、2025年は基準年だからです。そのため、2025年の月齢を計算するときには、(Y-YB) が 0 なので年の計算はしなくてもよいことになります10。
月の計算
この計算の中で一番ややこしそうに感じるかもしれませんが、実はとても簡単です。
月によって以下のように f(M) の値は決まっています。これを覚えてしまいましょう。
M | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
f(M) | 0 | 2 | 0 | 2 | 2 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
1月から6月までは少し変則的で、f(M) は 0, 2, 0, 2, 2, 4 となります。「020224」には覚えやすいように、「おにおににし」という語呂合わせが紹介されています11。7月以降は1ずつ増えていきます。
年の計算結果にこの f(M) を足します。
日の計算
「D日」でしたら、年と月の計算結果にさらにDを足します。
30を引けるだけ引く
年、月、日の計算が終わったら(計算の最中でも構いません)、計算結果から30を(値がマイナスにならないよう)引けるだけ引きます。30を引く計算が終わったら、その数字がその日のおおよその月齢です。
実際に計算してみましょう
試しに、2030年のペルセウス座流星群が極大になる頃の月齢を計算してみます。2030年8月13日としましょう。
年の計算
2030年の、過去直近の基準年は2025年です。ですから、年の値は (2030-2025) × 11 = 5 × 11 = 55となります。
月の計算
8月に対応する月の値 f(M) は6です。
年の値55に6を足します。55 + 6 = 61 です。
日の計算
13日なので、年と月の値の合計61に13を足します。61 + 13 = 74 です。
30を引けるだけ引く
74から30を引けるだけ引いていきましょう。
74 - 30 = 44 です。まだ30を引けます。
44 - 30 = 14 です。もう30を引くことはできません。
2030年8月13日の月齢は14くらいになりそうです。月齢15くらいが満月ですから、2030年のペルセウス座流星群は、月明かりの影響が強そうだということがわかります。
確認のため、国立天文台の「こよみの計算」で2030年8月13日12時の月齢(正午月齢)を計算させてみると、13.7と表示されました。14 - 13.7 = 0.3 ほど違っていますが、この簡易計算でもおおよそ正しい月齢を計算できたことがわかります。
どのくらい正確か
試しに、2021年から2030年までの1月1日と7月1日の月齢などを、この簡易計算と正確な計算(国立天文台の「こよみの計算」)とを比べて、どのくらいずれがあるかを調べてみました。
日付 | 簡易計算 | 正確な計算 | 日付 | 簡易計算 | 正確な計算 |
2021年1月1日 | 16 | 17.4 | 2021年7月1日 | 21 | 20.7 |
2022年 〃 | 27 | 27.8 | 2022年 〃 | 2 | 2.0 |
2023年 〃 | 8 | 8.7 | 2023年 〃 | 13 | 12.9 |
2024年 〃 | 19 | 19.1 | 2024年 〃 | 24 | 24.6 |
2025年 〃 | 1 | 1.2 | 2025年 〃 | 6 | 5.7 |
2026年 〃 | 12 | 12.1 | 2026年 〃 | 17 | 16.0 |
2027年 〃 | 23 | 23.1 | 2027年 〃 | 28 | 26.3 |
2028年 〃 | 4 | 4.3 | 2028年 〃 | 9 | 8.4 |
2029年 〃 | 15 | 16.0 | 2029年 〃 | 20 | 19.0 |
2030年 〃 | 26 | 26.5 | 2030年 〃 | 1 | 0.2 |
2024年2月29日12 | 19 | 19.2 | 2024年3月1日13 | 19 | 20.2 |
この中では、2027年7月1日の月齢のずれが 28 - 26.3 = 1.7 といちばん大きく、他はすべてそれより小さなずれでした。このくらいのずれでしたら実用上は問題がなさそうです。
天文月報の記事には「誤差は±1日で2日とずれることはめったにない」「【この簡易計算の】適用範囲は1750~2200年で、端の近くでは2日の誤差も止むを得ない」と書かれています。月の満ち欠けのおおよその状況を知るには十分だと思います。
関連情報
参考
- 日本天文学会:天文月報1968年7月号「おに・おに・にし-簡易月齢計算法」
- 国立天文台:
- こよみの計算
(月齢を計算するには、「計算日時」を選択して、「計算内容」の「月の高度と方位・月齢」の「Go」をクリックします) - 月齢について
- 「月齢」ってなに?なぜ小数がつくの?
- こよみの計算
その他
脚注
- 月齢と月の満ち欠けは完全には一致しません。つまり「満月の月齢はいつでも15」ということにはならないということです。理由は、月が太くなるペースや細くなるペースが、その周期ごとに少し違うためです。
- 厳密には「黄経」が同じになった瞬間
- 2時間24分は小数で示すと2.4時間です。2.4時間は24時間(=1日)の10分の1ですので0.1日ということになります。
- 満月は明るいため、月明かりが暗い星を隠してしまい、星があまりよく見えません。また、満月のときはその明るい月がほぼ一晩中出ています。
- でも一方で月を見るもの楽しいので、三日月とか上弦の頃をあえて選ぶこともあります。
- 「新月前後の暗い夜にホタルを見たい」とか「満月に照らされた富士山を見たい」とか、他にも月の満ち欠けが気になる状況はありそうです。
- ギェギョポン個人の感想です。
アニメ映画「サマーウォーズ」で、卓越した数学力・暗算力で世界の危機に立ち向かう主人公に胸を熱くした・する人なら同じような気持ちになるのでは? サマーウォーズは2006年の作品ですが、結構毎夏テレビで放映されています。 - 日本の天文学者やアマチュア天文家が多く所属する学会です。ギェギョポンも準会員です。(会費を払えば誰でも準会員になれます。)
- 天文月報の記事では「1940年」になっていますが、間違いだと思います。
- この記事を公開したのが2025年も半分を過ぎた8月というのは、少し出遅れた感がありますが。
- 「おにおににし」に特別な意味はありません。
- 基準年から遠い閏日
- 基準年から遠い閏日の翌日